【債務整理

人は、さまざまな事情から、多額の負債をかかえ、自己の債務を返済できない状況に陥ることがあります。時に、債権者から厳しい督促を受けて、平穏な日常生活が害されている場合も少なくありません。
このような状況から脱出するために、一定の条件を満たせば、債務の全部または一部の支払いを免れることができ、再出発できるようにする手続を総称して、債務整理といいます。

債務整理の方法としては、主に、①自己破産、③個人再生、③任意整理、の3つがあります。


①自己破産

債務者が支払期限の経過している債務を支払っていくことができない状態に陥っている場合(支払不能といいます)に、裁判所に対し、自己破産の申立をし、裁判所の関与のもと、申立人の財産を現金化して債権者に配当する手続です。配当後に残債務について、裁判所が相当と認めた場合には、支払免除の許可(免責許可決定といいます)を受けることができます。
破産手続では、一定の財産(原則として、預貯金、保険、自動車等の各項目20万円以下、現金と併せて合計99万円以下)については、換価する財産から除外することが許される場合があり、除外された財産については、破産手続が開始した後も保有することが可能です。
ただし、免責許可決定によって全ての債務が免除されるわけではなく、公租公課(市県民税、国民年金保険料、国民健康保険料等)や故意に加えた損害によって生じた債務は免除されず、破産手続が終わった後も残額を支払っていく必要があります(交渉によって分割払に応じてくれる場合もあります)。
また、法律の定める一定の事由がある場合(免責不許可事由といいます。例えば、過度の浪費やギャンブルによって多額の債務を負った場合がこれにあたります)には、免責許可決定を得られない可能性がありますし、生命保険外交員や警備員等の一定の職業は破産者であることが欠格事由とされていますので注意が必要です。

②個人再生

現在一定の確実な収入があり、今後もその収入を得る見込みがある債務者が、裁判所の関与のもと、債務の一部を一定期間内に支払うことを内容とする計画(再生計画といいます)に基づき、債務を返済することにより、残債務については免除を受ける制度です。支払うことになる債務の金額については、民事再生法の定める所定の基準によって算出されます。
個人再生手続では、住宅ローンの支払について特別の条項を定めることができ(住宅資金特別条項といいます。)、自己破産の場合と違い、マイホームを残したまま、債務の免除を受け、債務を整理することができる点に大きなメリットがあります(ただし、住宅ローンは遅延損害金も含めて免除はされません)。
また、個人再生については、資格制限や免責不許可事由のようなルールはないので、破産手続による免責許可決定が受けられない可能性がある方も、利用することができます。

③任意整理

各債権者と債務の支払方法について個別に交渉し、成立した合意内容に基づいて債務を返済していくことを任意整理といいます。
自己破産や、個人再生と異なり、裁判所は関与せず、債務の支払方法は当事者間の合意によって定めることになります。また、破産手続のように所有する財産を強制的に換価されることはありません。また、任意整理には破産手続における免責不許可事由や職業の欠格事由のような制限はありませんので、破産手続を利用できない依頼者にも利用可能です。
もっとも、裁判所の関与のもと強制的に進めていく手続ではないため、債権者との交渉がまとまらなければ、債務の免除を受けることができません。また、個別の債権者との合意を成立させていくという性質上、多数の債権者がいるような事案では適当ではありません。

ご相談にあたってのご注意

ご相談していただいた際には、上記3つの債務整理の方法のうち、依頼者の皆様の置かれた状況、残したい財産種類などの要望に応じて、最も適切と思われる方法をご提案し、手続を遂行させていただきます。
もっとも、相談の時期が遅くなるほど、取り得る債務整理の手法は限られてきます。債務の支払に不安がある場合には、早期に相談にきていただければと思います。

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